古くからあるお店や施設といったものは地域のみなさんと共に時を過ごした大切な場所です。
しかし老朽化し、耐震性などの問題から取り壊さざるを得ない事案が増えています。
高額な修繕費を用意するのは難しいけど、せめて記録は残したい。
そんな想いから3Dスキャナーやフォトグラメトリ技術を利用する「デジタルアーカイブ」の動きが広まっています。
大切な思い出をデジタルアーカイブへ!デジタルアーカイブが注目されている理由
近年こうしたデジタルアーカイブが盛んに議論されている背景には、以下の理由が挙げられます。
・3Dスキャナーやフォトグラメトリ技術の発達で、従来に比べて安価にできるようになった
・高度成長期に作られた施設の老朽化が始まり、多額の費用を掛けて修繕するか取り壊すかの選択が迫られている
・人口減少や保存の担い手不足の中、地域の歴史や文化を後世に伝えるにはどうすればいいのか?
・コロナ禍による客足の減少で事業継続が困難になった施設が増えている
とくに老朽化により耐震基準を満たせず使えなくなってしまった施設や保存活動の担い手不足の問題は全国各地であり深刻な問題となっています。
こうした問題の解決のため「現実空間を取り込みデジタル上に再現する」という技術が注目されています。
また、3Dレーザースキャナーやマターポートの登場で以前に比べると安価かつ簡単に実現できるようになったというのも大きな理由です。
デジタルアーカイブの事例
星の王子さまミュージアム
神奈川県箱根町にあった「星の王子さまミュージアム」は同名小説の著者サン=テグジュペリの生誕100周年を記念して1999年に開園し2023年3月に閉園されたテーマパークです。
フランスの街並みや物語の世界観を再現した施設などがありファンに親しまれてきました。
そんな星の王子さまミュージアムでは閉園前に遠方で来園できないファンのためのデジタルアーカイブを公開しました。
那覇市民会館
沖縄県那覇市にある那覇市民会館は老朽化により16年から休館し、解体が予定されていますが、デジタルアーカイブにより歴史を保存することができました。
今回、NHK沖縄が集めた3Dデータを活用し、沖縄国際大学産業情報科と連携してデジタル空間上にバーチャル市民会館を作成しました。
このデータは跡地に建設予定の複合施設で展示予定です。
3D空間にさまざまな情報を出せる
タグ
3D空間上にタグを設置できます。このタグには文章や写真、リンクなどを載せられるので、展示品の補足やECサイトへの誘導ができます。
現実空間と違い設置スペースを気にしなくて済むので、文章量が多くても安心です。
秋葉原の名物ケバブ店「スターケバブ 2号店」
秋葉原にあるケバブ店として有名で23年2月に閉店した「スターケバブ 2号店」。
その2号店の外観の3Dモデルがお店のファンによって制作・公開されました。
なお、2号と同じく閉店予定だった1号店はファンの声援などもあり3月末より復活しています。
いすみ鉄道 「キハ28」
千葉県の房総半島を走る「いすみ鉄道」にあるキハ58系「キハ28」という車両が2022年に定期運行を引退。
1960年代に製造され、いすみ鉄道では10年近く走行したこの車両はレストラン列車などとして親しまれてきました。
貴重な車両を次世代に残すために、いすみ鉄道ではクラウドファンディングを実施し、車両の保管費用とメタバース空間での利用のためのNFT制作費用を集めました。
まとめ
ここ最近のデジタルアーカイブ事例をご紹介しました。
以前は史跡や文化財といった公共財のデジタルアーカイブ化が多かったのですが、近年は民間企業や有志によるものも増えています。
これには、3Dスキャナーの普及で技術者が増えたことやクラウドファンディングで多方面から出資を募れるようになったことが大きく、それがこのような活動の活発化につながっています。
あなたの大切な思い出もデジタルアーカイブで保存すれば、詳細に残すことができるでしょう。
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